麻由美の人生の汚点
麻由美とSMプレイを始めて6ヶ月ほど経った頃、突然二人の関係の解消を宣告された。今思えば医者の戸田良一との交際がこの時から始まったのであろう。私とのSM関係が良一にばれては困るからであろう。
たまに麻由美の会社に出向くことがあって、廊下で彼女とすれ違うことがあり、そんな時、彼女はやわらかい微笑を白い頬に浮かべて、如何、お元気、などと挨拶はするけれど、すぐに冷静な冷たい表情に返って社長室に入っていった。ほとんどその頃には麻由美が設立した会社も大きくなり、従業員や会社に投資する株主も増え、私が社長室に足を踏み入れることはなくなっていた。急ぎ足で社長室に戻る彼女の脚の線の素晴らしさを私は淋しい気持ちで見送るばかりであった。以前は親しく相談をされたり、なんと言っても隠された嗜好であるSMをした間柄なのに今はなんとよそよそしいことか。よそよそしいどころか間違いなく私を煙たい存在だと思っている様子がありありと伝わってくる。私とのことはいかにも彼女の人生の消し去りたい汚点となっているかのようであった。社長室の前を通ると、医者の良一と麻由美の笑い声が聞こえてきた。二人して結婚式の打合せでもしているのであろう。私は胸の締め付けられるような孤独を感じるのであった。
都心の一流ホテルで医者の戸田良一と麻由美の婚約披露のパーティがフロアを借り切って行われたのはそれからしばらく立ってからであった。
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