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逆説的な禁欲主義者

あくまで鬼六のSMは、相手に肉体的な痛みを与えるよりも、辱めることに大きな喜びを見出すものである。青竹で叩くにしても、それはその行為自体に目的があるのではなく、あくまで精神的に追い詰める為の補助的手段に過ぎないのだ。その他の肉体的責めについても同様である。
つまり鬼六のSMは、責められる側が羞恥心を持っていることが前提条件となり、初めて成り立つのである。この点、サドとは全く異なる。サドの犠牲者はほとんどの場合生命を脅かされているので、恥ずかしがっている余裕などない。一方サドのリベルタンは、犠牲者を肉体的に苦しめ、痛めつけることには関心があるが、その羞恥心など、どうでもいいのだ。

捕らわれた女ヒロインが、身も世もあらず羞恥にのたうっているからこそ、悪漢達が大喜びするのだ。もし彼女が、平然と自分の性器の機能を自慢したり、縛られたのが嬉しくてニコニコしていたのでは、悪漢達の欲望も萎えてしまうに決まっている。
獣欲に満ちたような悪漢達だが、そのわりには、性交と射精は案外少なく、ほとんどの時間とエネルギーを、羞恥責めに費やしており、逆説的な禁欲主義者とも言えそうなのだ。つまり、いつまでも自分たちはセックスやそれに準ずる行為で満足することがないから、いつまでも執拗に、獲物をいたぶり続けられるのだ。
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