罠に墜ちた麻由美
「こんばんわ」
麻由美は柔らかい微笑を口元に作ってドアの向こうに立っていた。
清純な白地に花模様の付いたワンピースを着てそれがしなやかさと妖しい官能味を持つ彼女の肢体にぴったり似合っていた。
会話はあの当時の二人の話題になったが、私はすっかり落ち着きを失って麻由美の言葉を上の空で聞いている。たった今、麻由美にすすめた生ジュースには強い睡眠薬を入れておいたからだ。
「なんだか、このジュース、変な味がするわ」
俯いて静かにストローでジュースをすすっていた麻由美は引き締まった美しい象牙色の頬を曇らせていった。
「気のせいかしら」
喉が渇いていたのか、ほとんどグラスのジュースを飲み干した麻由美は、
「でも、鬼縄さん。会社で逢った時なんかに私、ずいぶんよそよそしい態度をしているので怒ってらっしゃるのじゃない?」
社長というのは従業員の手前、会社にいる限り、誰に対しても冷静な身構えが必要なのよと、麻由美は説明した。
「実は、あの婚約披露のパーティの時だってあなたにも招待状を書いたのです。でも、姉の彩がこんなのは必要ないと外してしまったの。姉はあなたのことがどういう訳か嫌いなの。ごめんなさいね、ほんとうに」
久しぶりに麻由美と打ち解けあって話すうちにやはり麻由美という女は美麗だけではなく心根も美しい女であったのだと思い知らされた気分になる。
その人間的にも美しい麻由美を俺はこれから卑劣な手段でなぶりものにしようとしている。
もう矢は放たれた。麻由美は睡眠薬入りのジュースを飲んでしまったのだ。
「私、私、一体どうしたのかしら、変だわ」
麻由美は額に手を当てて立ち上がりかけたが、すぐにまたソファへ腰を落とすと、青ざめた表情でそのまま身体を横たえてしまった。
「どうやら、うまくいったらしいな」
麻由美は柔らかい微笑を口元に作ってドアの向こうに立っていた。
清純な白地に花模様の付いたワンピースを着てそれがしなやかさと妖しい官能味を持つ彼女の肢体にぴったり似合っていた。
会話はあの当時の二人の話題になったが、私はすっかり落ち着きを失って麻由美の言葉を上の空で聞いている。たった今、麻由美にすすめた生ジュースには強い睡眠薬を入れておいたからだ。
「なんだか、このジュース、変な味がするわ」
俯いて静かにストローでジュースをすすっていた麻由美は引き締まった美しい象牙色の頬を曇らせていった。
「気のせいかしら」
喉が渇いていたのか、ほとんどグラスのジュースを飲み干した麻由美は、
「でも、鬼縄さん。会社で逢った時なんかに私、ずいぶんよそよそしい態度をしているので怒ってらっしゃるのじゃない?」
社長というのは従業員の手前、会社にいる限り、誰に対しても冷静な身構えが必要なのよと、麻由美は説明した。
「実は、あの婚約披露のパーティの時だってあなたにも招待状を書いたのです。でも、姉の彩がこんなのは必要ないと外してしまったの。姉はあなたのことがどういう訳か嫌いなの。ごめんなさいね、ほんとうに」
久しぶりに麻由美と打ち解けあって話すうちにやはり麻由美という女は美麗だけではなく心根も美しい女であったのだと思い知らされた気分になる。
その人間的にも美しい麻由美を俺はこれから卑劣な手段でなぶりものにしようとしている。
もう矢は放たれた。麻由美は睡眠薬入りのジュースを飲んでしまったのだ。
「私、私、一体どうしたのかしら、変だわ」
麻由美は額に手を当てて立ち上がりかけたが、すぐにまたソファへ腰を落とすと、青ざめた表情でそのまま身体を横たえてしまった。
「どうやら、うまくいったらしいな」
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