エレベータの中
「もしもし。。彩さん。実は私は部屋で貴女を待っているのです。部屋まで来て下さい。部屋の番号は2808だ。待ってるよ。」
彩は一瞬怪訝そうな表情を見せたが、部屋に来ることを承諾した。
席を立った彩の後を俺はそ知らぬ顔で追った。
彩は私の顔を知らない。
歩く彩の後姿を眺めながら、この女がまもなく俺の責めを受けるのだと思うと欲情が昂ぶる。
俺は脚フェチなので女の足にはうるさい。その点も彩は俺を満足させてくれている。いい足をしている。外見的には申し分のない女だ。
彩はわき目も触れずにエレベータまで歩いていった。
好都合なことにエレベータを待つ客は彩と私の二人だけだった。
エレベータの扉が開くと、私も彩と一緒にエレベータに乗った。
ふふふ。。。
エレベータには彩と私のふたりっきりだ。
「お嬢さん。お美しいですね。」
私は彩に声をかけてみた。
「このホテルにお泊りですか?」
彩はちらっと私の方に視線を向けたが、いかにも声をかけられたのが迷惑そうな表情をして黙っていた。
「お嬢さん。お連れがいらっしゃるのですか?もしお時間があるようでしたらお食事でもいかがですかな?」
私は無遠慮に話を続けた。彩は私を鬼縄とは思っていない。私をエレベータの中で礼儀もわきまえずに話しかけてくるいやらしい男に思ったことだろう。
彩は毅然とした口調で俺に言った。
「いえ。私には予定がありますので。」
それだけ言うと私を見下すような表情を横に向けてエレベータの階を表示するランプに視線を移し、これ以上話しかけないでという態度を露骨に表わした。
もし約束をしていなかったなら、彩との関係はエレベータの中だけで終わったことだろう。
俺は指を咥えて彩を見送るだけの男にしかならなかっただろう。
しかし、彩はまだ気付いていないがこの私がこれからお前を責める男なのだよ。
その私の誘いを断るなんて。。この彩の態度が私をますます奮い立たせた。
後で思い知らせてやるよ。後で後悔する事になるのだよ。
ふふふ。。。
エレベータが28階に止まり、扉が開いた。
彩はこの気まずい雰囲気から早く解放されようと扉をすりぬけるようにエレベータを降りた。
彩は部屋番号の案内プレートに目をやり、2808のルーム番号を見つけると早足でその部屋の方向に向かった。
私は彩の後を追い、声を更にかけた。
「お嬢さん。2808号室に行くのですか?」
彩は驚いた表情で振り返った。
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