ボートの話。。
陸の上では生きられない。
だからボートにのっている。
陸で住んでいる人間達から見れば変わり者に映るでしょう。事実変わっているからいいのだけど。
ボートで生きている人間は昔は少なかった。
周りを見渡しても俺と同じようにボートに乗っている奴なんていなかった。
でも最近嬉しい事に私と同じようにボートで生きている人間を良く見るようになった。
寂しくなくなった。。
同じように陸では生きられない人間がいる。
陸では生きられないのに、ボートも持つことを許されない人達がいる。
彼らはボートをもてないから泳ぐしかない。
泳ぐ人間も昔は少なかった。
周りを見渡しても全くいなかった。
みんな陸の上で生活しているんだ。ボートを持てないのにわざわざ水の中に入ることはない。
そんな変わり者なんかいないと思ってた。
私は気がついたらボートを持たされていた。
だから水の上で生きている。。。
でも最近、泳ぐ人達を見かけるようになった。
私と同じように水の中で生きるもの達だ。
一生懸命泳いでいる。
どこに行きたいんだろう。どこまで泳ぐんだろう。
私はボートに乗っている。
時々、泳ぎに疲れた奴が私のボートに近づいてくる。
私のボートでちょっと休みたいのだろうか。
いいですよ。 お休みなさい。
でもボートには乗せてあげないよ。
沈むからね。私は泳げないんですよ。
私はボートの縁につかまって、休む事だけを許可する。
少し休んだらまた自分で泳ぐんですよ。
私に出来る事はボートの縁をつかまらせて上げる事と、それとしばらく泳ぐ奴と一緒に水の上を進むこと位だ。
さあ。一緒に向こう岸まで行きましょう。
そのうちに何故か無性に泳ぐ奴の邪魔をしたくなる。
一生懸命泳いでいるのを見ると棒でつつきたくなる。
困った性分だ。
それでもなお必死で泳ごうとすると、今度は棒で叩きたくなる。
時々奴は水の中に沈む。
それでも浮かび上がってなおも泳ごうとする。
また、叩く。。。
中には沈んだっきり浮かんでこない奴もいる。
溺れてしまったんだろうか。
それともこんな私のボートの近くにいたら溺れてしまうから、潜って逃げたのだろうか。
泳ぎが上手くなって、私のボートより速く泳げるようになる奴もいる。
奴はどんどん私のボートから遠ざかっていく。
もうつつけない。もう叩けない。。。。
私のボートの周りには誰もいなくなる。。。
私はボートにひとを乗せない。
でもボートにひとを乗せる奴もいる。
泳ぎに疲れた者たちは乗せてくれるボートを探す。
乗せてくれますか?
親切に泳ぐ者たちに声をかける奴もいる。
乗せてあげようか?
もう泳がなくていいんだよ。
僕のボートで向こう岸までゆこう。。
ゆっくりおやすみ。。
僕が連れてってあげよう。向こう岸まで。。
一緒にいこうね。
泳ぎに疲れた者たちは乗せてくれるボートを探す。
俺はのせない。。
泳ぎに疲れた者を乗せたボートがいる。
泳ぎに疲れた者たちは乗せてくれるボートを探す。
泳ぎに疲れた者を乗せたボートの周りに疲れた者たちが集まりはじめる。
乗せてくれますか?
親切に泳ぐ者たちに声をかける奴もいる。
乗せてあげようか?
俺は泳ぎに疲れた者を乗せたボートを探す。
そのボートを見ているのが楽しいからだ。
ひとりしか乗せないボートがある。
向こう岸まで行くのだろうか。
向こう岸まで行けるのだろうか。。
私はボートの行先を知らない。
そのうちにそのボートはいなくなる。
私の視界の外に出たのだろうか。
私はまだ向こう岸を知らない。
だから、
私はボートの行先を知らない。
俺は泳ぎに疲れた者を乗せたボートを探す。
そのボートを見ているのが楽しいからだ。
大勢ひとが乗っているボートがある。
あんなに乗って向こう岸まで行くのだろうか。
あんなに乗って向こう岸まで行けるのだろうか。。
ボートは進めなくなる。
ボートが沈みはじめる。。
俺はのせない。。
ただ、見ているだけだ。
ボートが沈みはじめる。。
沈みはじめたボートからひとが水の中に飛び込む。
つぎつぎと飛び込んでいく。
おろされているのだろうか。
自分から降りているのだろうか。
俺にはわからない。。
俺は沈みそうなボートを探す。
そのボートを見ているのが楽しいからだ。
ボートに乗った者は泳ぎを忘れる。
ボートを持ったものは泳げない。
もう泳がなくていいんだよ。
僕のボートで向こう岸までゆこう。。
ゆっくりおやすみ。。
僕が連れてってあげよう。向こう岸まで。。
一緒にいこうね。
だから泳ぎを忘れる。
ボートを持ったものは最初から泳げない。
俺はボートにひとを乗せない。
俺は泳げないからね。
ボートが沈むのは誰のせいだろう。。
乗せた奴が悪いのか。
乗った奴が悪いのか。
泳ぎに疲れた者達をボートに乗せるのはいけないこと?
助けを求める心は悪いこと?
たくさんひとを乗せたから?
でも、ボートは沈む。
ボートと一緒に沈む?
ボートと一緒に溺れる?
それとも、
向こう岸まで泳ごうか。
それとも、
沈まないボートを探す?
ボートは沈む。
俺のボートはひとを乗せたら沈むボートなんです。
だから、俺はボートにひとを乗せない。
俺は泳げないからね。
私はボートの縁につかまって、休む事だけを許可する。
少し休んだらまた自分で泳ぐんですよ。
私に出来る事はボートの縁をつかまらせて上げる事。
それと泳ぐ奴と一緒に水の上を進むこと。
さあ。一緒に向こう岸まで行きましょう。
ボートは行先ではない。
ボートは見果てぬ向こう岸までいく乗り物ですよ。
ボートに乗ったからといって、安心は出来ない。
ボートは沈むこともあるからね。
あなたはボートが好きなの?
それとも向こう岸に渡りたいの?
誰も乗っていないボートが浮かんでいる。
もうボートはいらなくなったのか。
向こう岸まで辿り着いたから?
それとも溺れてしまったから?
俺はボートが好きだ。
ボートに乗っているのがいいんです。
陸では暮らせない。
昔からそうだった。
向こう岸が見えても俺はボートから降りないよ。
陸では暮らせないからボートに乗っているんです。
向こう岸の話。
誰か見たひといますか?
辿り着いたひと知ってます?
俺は知らない。
だって陸では暮らせないから。
陸で暮らせるのなら、わざわざ水の中に入ることないよ。
向こう岸も結局「陸」じゃない。
だから俺はボートに乗っている。。。
一緒に水の中を彷徨おう。
陸で暮らせないのなら・・・・・・。。。。
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| 鬼縄のSM | 09:20 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑
はじめまして。
ひきこまれるような文章でした。
ボートの話。
綴り方を影響されそうです。
自分表現をしっかりできる術を身につけたいと、ふと思いました。
またお邪魔させてください。
| 咲枝里 | 2004/10/03 06:16 | URL | ≫ EDIT